俺は此れまで何度も後悔してきたし反省もした、挫折も味わった
ガンマ団を新しく生まれ変わらせるために犠牲も払った、
それに対しての罪悪感もあるけど絶対に立ち止まったりなど出来なかった


俺はいつも前を見て歩くことを自分に言い聞かせ、
勿論周りもそれが当然であるように暗に言っていた。


それをしなかったのはアイツだけだ
俺が唯一後悔もせず罪悪感も微塵も感じなかった、あの男










全ての光を吸い込むような黒い髪で右目を覆った京都人は、
今日も俺の隣で「心友」として微笑んでいる
























此れといって、ではないさ




























初めて彼を貶めたのは士官学校時代だ
初対面でいきなり発火したアイツを殴り飛ばした後、
ようやくまともに授業に出てきたのはちょうど一年後
事後処理を含めるともう少し長かったかもしれない、なんせ校舎が全焼したのだから


目が合えば逸らすか睨みあうかのどちらかだった
仲が良くなる時と言えば、低脳な教官の授業をサボるために二人で口裏を合わせた
時だろうか?その時くらいしかまともな会話を交わさなかった





だからあの島で再会した時もはっきり言って初対面のような錯覚に陥った
それはすぐに消えうせてしまったけれど





俺の中でのアイツの存在定義は強い、それだけだった
だから総帥の座を狙っていることなど知りもしなかった、知っていたとしても
それが無駄な事だと解っていたから同じことだ


獣じみた目で俺を睨みつけ、口汚い言葉で面と向かって俺を罵る奴は
何処を探してもアイツだけだ。口惜しいのか都合いいのか微妙な所だが
俺は一族の長の息子で、無条件で優遇されていたのだ



その俺に面と向かって嫌いだと言ってのけたのはアイツだけだ
俺を俺として扱ってくれた友人は他にもいたが、どす黒い感情を
剥き出しにして接してきたのは後にも先にもアイツだけ


まあ陰でコソコソ言う奴は当然いたけれど






「シンタローはん!」







それなのに俺の言葉は鋭い刃物のようにアイツを抉り取り、
そうして出てきたのは酷く従順で思い込みの激しい、好戦的だった
アイツとは似ても似つかないものだった


何時どんなことを言っても笑顔で頷く
言わなくとも俺のためだと思ったことはどんな事でも実行した
命を投げ捨ててでも、実行したのだ



腹心の部下は必要だし、理不尽な怒りをぶつけても何も変わらない玩具も
俺には必要だった







友人たちは言う、嘘を吐いたままで良いのか?








それはアイツに対しての同情などではなく、俺が感じていると思った
罪悪感を拭い去るための提案だったのだろう。だけど俺はそんなもの
少しも感じてはいない。


それどころかアイツが俺の隣で笑い、泣き、俺のためだけに生きて死ぬのは
当然だと思っている。それに疑問を感じたことなど無い





アイツに取って心友なんて、自分の全てを捧げられる相手、固執することが
出来る相手だ。だからきっとお礼外の誰かが先に「友達だ」と言えば
そいつに全身全霊で尽くしていただろう。
俺だって俺だけの玩具が欲しかったんだから、利害は一致している


「シンタローはん、一緒にご飯食べに行きまひょv」
「誰かてめぇなんかと」
「んもぅ、照れ屋さんやなぁ」
「勘違いすんなボケッ!」
「ほな昼ごはんはどないするおつもりで?」
「良いから茶入れろ。あ、その前に日本で和菓子買って来い、3分以内」
「…高速艇使ぉても3日はかかりますわ…」



これまでアイツの幸せだけは考えたことが無い
前にコージか誰かが聞いていたが、案の定俺の幸せが自分の幸せだそうだ


アイツとの関係を変える気は無いけど、これが世間一般的に異常だと
言うことは解ってるつもりだ。少しは靡いてやれ、と言われることもあるが
そんなもの必要ない。これが一番なのだ










アイツは理解して俺の隣でいつまでも微笑むんだ
心友と言う定義が理解しあえる間柄だと言うのなら、
きっとあの時吐いた言葉も、嘘などではなく真実なのだろう



























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シンタローの独白形式シンアラ
最後に思ったことを時間の経過と共にお互い知らぬ間に受け入れて
今リースウェルが書いている強気アラシヤマと少し優しいシンタローが
生まれるんですね。


2004.08.16up
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