「貴方も私もポッキィイイッ!」



勢い良く自室の扉が開かれたと思ったら、奇声を発して飛び込んできた
侵入者と目が合った。ゆっくり事態を把握して、濁った瞳が収まった切れ長の
目をもう一度見る。















「何してますのん、お師匠はん」















































特別では無い記念日






















































「むしろそれは俺が聞きたいところだ」
「あらぁ、シンタローはんまで」



少し頭が軽くなったのかと思われるマーカーの後ろには、げんなりとした表情で
ドアに寄りかかってため息を吐くシンタロー。
マーカーが突然尋ねてきたことだけでも驚いたのに、シンタローが自分の部屋まで
足を向けたことで余計に驚く。用事があれば呼びつけるかと思っていた。




アラシヤマが読んでいた文庫本にしおりを挟む前に、それまでポッキーの箱を
鷲づかみにして突っ立っていたマーカーがつかつかと歩み寄り、それを奪い取って
しまった。




あ、と声をあげてもマーカーが返してくれるはずもなく。
指紋がつかないようにと被せられたカバーまではずされてしげしげと見られる。








「なんだ?ハーレクイ○文庫?ハーレム様の親戚かッ」
「いやそこでハーレムはんが出てくる意味がわからんわ」
「俺は白○社花丸文庫派だ」
「シンタローはんもズレたツッコミせんでええから!」








怪光線でも出るのでは無いかと思うくらいに目を見開いたマーカーが
アラシヤマの文庫本を引きちぎらんばかりに力強く叫ぶ。
いつもなら正統派ツッコミをしてくれるはずのシンタローまでマーカーの
妙なテンションに毒されている。この二人に対してツッコミが自分一人だけと
言うのは少々辛いものがある。というか人が何を読もうが勝手だろう。



それを口に出せれば苦労しないのだが、マーカーの周りには陽炎が揺らめいている。
何故か臨戦態勢に入っている彼には極力触れない方が無難だ










「で、今日はどないしたんどすかお師匠はん」








マーカーの興奮が収まるのを待ってアラシヤマが話しかけると、
肩で息をしていたマーカーが勢い良く顔をあげ、アラシヤマの両肩をがしりと掴んだ





「ひぃッ」
「何がヒィだ!良いか、今日は何の日だ!?」
「え…11月11日どすな。なんも無かったと思うんやけど…」
「この愚か者がッ!良いか、今日はポッキーの日だ!あなたもポッキー私もポッキー、貴方も私もポッキィイイイッ!」
「シンタローはーん、このお人酔っとるんどすか?」




そのまま意識を失いたいと思った恐怖が一瞬で吹き飛ぶようなマーカーの発言に
少し頭痛がしてくる。思わずシンタローに助け舟を要求するが、当の彼は力なく首を
振って乾いた笑いを漏らした。








「それがなぁ…ハーレム叔父さんから連絡あって、いきなり本部に寄るっつーんだよ。
 厄介な荷物があるからちょっと預かれって。危険なわけでは無いから一晩放っておけ、
 って言われてでっかい木箱を置いてったんだけど…」








そこまで言って、ごにょごにょとシンタローが口ごもる。
開けてはいけないと言われては開けたくなるのが子供の心情は大人になったはずの
シンタローの心に深く根付いていた。
気まずそうに目を逸らしているのを見る限りアラシヤマの予想は間違っては居ないだろう。





「好奇心に負けて箱開けたらお師匠はんが入ってたんどすか?」
「…うん…」
「はぁ…」





縮こまるように小さく答えたシンタローに自然にため息が出てしまう。
素直に謝られてしまっては怒るわけにもいかない。
マーカーは先ほどから金魚にブツブツと愚痴らしきものを言っているが、
実害が無いので放っておくことにする







「お師匠はん、ハーレムはんの損になるような事は絶対せぇへんのになぁ…どないしたんやろ」
「ああ…なんか飛空挺のリビングでポッキーの箱を見つめる姿が異様だったからとか…」







本当に厄介払いか。





今日は確かケンタウルスホイミが出るレースがあったはずだ。
その程度のことでマーカーを放り出すのならきっとまた負けたのだろう。
ポッキーのクッキー部分を砕いて金魚に黙々とやっているマーカーは確かに
怖い。そして多少鬱陶しい。愚痴を言い終わったおかげで金魚に対して
一方的な親しみが生まれたのか、少し楽しそうだ




シンタローが直々にマーカーを連れて来たと言う事は一応反省はして
いるのだろう。




炎を使うマーカーがよく木箱を燃やして逃げなかったものだ。
ハーレムに出るなと命令されていた以外に理由は思い当たらないが。









「もう…とりあえず可愛い弟子に会わせりゃ何とかなるかなって…」
「へぇへぇ。お師匠はんはわてが預かりますわ」
「ありがとうアラシヤマ!さすが俺の心友ッ!」










がば、と抱きつかれて思わず歓喜の声をあげそうになるのを必死にこらえる。
ハーレム隊長に蔑ろにされて此処まで来ているマーカーの前でイチャつきなど
したら自室どころか本部が壊滅してしまう。
これ以上借金が増えたらガンマ団は破産してしまうだろう。

























マーカーがこちらに背を向けていて助かった。



調子に乗って首筋に頬をぐりぐりと擦り付けているシンタローの姿を
見られずにすむ。ついでにニヤけている自分の顔も。



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シンアラ+マカ、ポッキーの日小説書こうと思ったのにポッキーただのネタに
なってますよ…


マーカーは時々奇行に走ると可愛いと思います。いつも完璧に整えられているマーカーの
思考回路がハーレムの愛によってショート寸前。今すぐ会いたいのです。
ほんのり某美少女戦士の歌(初期)を混ぜ込んでみました。


いつかハレマカでカプ質やるときはイメージソングに『Moonlight伝説』って書きます。


2004.11.11up
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