集中力と言うものは一般的にはどのくらい持続されるものだっただろうか
サンプルならガンマ団全員を差し出しても構わないから一般的数値をこの場に
たたき出して欲しい。集中力は個人差が出るものだ、と言わせないための多少の
捏造なら厭わない、むしろ推奨する






「アラシヤマぁ、残りの書類お前やっとけ。飽きた」






誰かこの理不尽な総帥様の集中力をあと5分でも良いから保たせてくれないだろうか
幼稚園児だってこの人の倍は集中力があると思うのは自分の被害妄想だろうか?
ここ最近、私室に帰った記憶が無い














無給休暇













2分前、アラシヤマはさほど多くは無い書類の束を片手に総帥室へと出向いた
前線に出ない限りは事務局の主任として働いているが、面倒くさい書類や
総帥の機嫌を損ねそうな報告は全てアラシヤマに回ってくる


今持っているのも平団員からの陳情書や他部署からの意見書、苦情等をまとめた
もので、当然受け取ったシンタローの顔は渋かった。しかし横に控えているキンタローに
ぎろりと睨まれて書類に目を通すポーズだけは取った。


本当にポーズだと解ったのはキンタローがグンマに10時のおやつだと呼び出されて
退室してしまってからだ


厳しいお目付け役が居なくなったのを境にシンタローの集中力はぱったり途切れてしまった
きっちり10時に書類を持ってきたアラシヤマはそのきっかり2分後に仕事を押し付けられる
こととなった



「シンタローはん、わての出来ることは無いんやけど…」
「だろうな、この手のやつは」
「ならちゃんと総帥としての仕事を全うしておくれやす」
「やだ、めんどー」


子供のような理屈が通用すると思っているのか、アラシヤマなら許してくれるとでも
考えているのか。シンタローは一向に書類に向かう気配は無く、ペンをくるくると回して
ぼんやりと窓の外を見つめていた



「どへんしたら仕事してくれるん?」
「どーあっても仕事はしませんー」



至極どうでもよさそうに吐き出された言葉に、執務机がミシリと悲鳴をあげる
スプリンクラーを発動させないように感情を抑えていたアラシヤマがその握力で
もって机の角を潰してしまったらしい


シンタロー音に反応してちらり、と目線をやったが大した興味を引かれる
ことでも無いとまた窓の外へと視線を巡らせた



ああ、こんなときにキンタローはグンマとのほほんとお茶をしているのだ
一度魔が差して口をつけたことがあるあのアールグレイは、砂糖壷の中に
紅茶を垂らしただけの代物だった。とにかく甘い。


紅茶おいしいでしょ、と微笑むグンマに初めて殺意を抱いたのは確かあのときだった




そう思うとキンタローも仕事をしているうちに入るのかも知れない
ガンマ団最高頭脳の接待を







なんとかシンタローへの怒気を霧散させようと思ったのに余計な
ことを思い出して胸焼けをおこしてしまった
仮眠もまともに取れてない脳みそがぐらぐらと揺れる


シンタローが余りにも高速で仕事を放棄したためにこの場に留まって
しまっていたが、持ってきた書類は既に自分の管轄から離れている
きちんと目を通した時点でアラシヤマの責任は果たされている、此処にいるのは
ただ書類を持ってきただけのこと


必死にそうまとめるとアラシヤマは退室して脳と体を休めるべく、
一言失礼しますと声をかけて机から離れた



しかし体は微動だにせず、





「アラシヤマくんは疲れているんだよ!」
「………………………………………………………………は?」





大昔に見た教育番組の人形のようなテンションでシンタローが言う
あまりにも嘘くさくご都合主義なあの人形と同じような
見れば、シンタローは笑顔だった。アラシヤマの前なのに笑顔だった


心友宣言をしているアラシヤマもさすがにその笑顔には顔を引きつらせ、
自分の両腕をぎりぎりと掴んでいるシンタローを燃やしてしまおうか、
と物騒な考えが浮かんだところで唐突に視界が塞がった






塞がったのは視界だけでは無く、罵倒するために開いた唇までも

















見開いたアラシヤマの目に、こちらを見つめるシンタローの瞳が
映った。近距離すぎるためぼんやりとしている輪郭が余計に今の状況を
認識させる


開いた唇をなぞって舌が入ってくる
驚いて離れようとしても、体は反応しなかった
中腰でしかもその両腕を自分の拘束に使って何故バランスを崩さないのか、
心の中で毒づいてもシンタローの舌は動きを止めない


耐え切れなくなって目をきつく閉じると、喉の奥でシンタローが
小さく笑った
舌を吸い上げられびくりと体を揺らすと、ぴちゃりと水音が漏れた



「んぅーッ」



抗議の声をあげるが、唇が塞がれていてはこもったうめき声しか発せられない


朝の光が差し込む中自分は一体何をされているのか、
アラシヤマが正常な判断力を手放しかけた頃、ようやく唇が離された
盛大な水音とともに


そのまま床にへろへろと座り込んだアラシヤマを、席から立ち上がった
シンタローがにやりと笑って見下ろした
見上げたアラシヤマの目に、濡れた己の唇を舌でなぞるシンタローの笑顔がうつる


明らかにわざとだと知れるその行動が、アラシヤマの顔に火をつけた
顔を背けていればシンタローを見なくてすむが、一度視線が合えば逸らしたほうが負け、
という厄介な考えが邪魔をする





「あーあ、唇びしょびしょ」





ご丁寧にもシンタローはアラシヤマの唇の水気まで舐め取ってくれた
思いつく限りの罵詈雑言を吐いてやろうと口を開いても、再び唇を塞がれて
それも叶わなかった


今度は、合わせるだけですんだけども




「…いったいなんやの」





ようやく出た言葉は罵詈雑言でも泣き言でも睦言でもなく、
単純な疑問だった





「したかったから」






単純な疑問には簡単な回答、シンタローは平然と言い放つと
アラシヤマの体をひょい、と抱え上げ目の前のソファーに投げ飛ばした
弧を描いて落ちるアラシヤマの口からか細い悲鳴があがる
下手に声をあげたら舌を噛むと思ったのだろうか


ソファーのスプリングがアラシヤマの体を跳ね上げる



「今度はなんですのん!?」
「何怒ってんだよ」
「いきなり口吸われた挙句投げられたら誰でも怒りますわ!」
「優しいアラシヤマくんは怒らないだろ」
「さっきから何けったいな声出してんのやッ」
「ヤァ!ぼくの名前はミッキ」
「やめぇ、訴えられるわ!」



自分の知っている総帥はこんなに頭が軽そうな人格を有していたのだろうか?
少なくとも昨日までは女は巨乳が良いとかほざいてた気がする
笑顔で世界的に有名な直立二足歩行のネズミの真似などしないはずなのに


新しい境地を開拓したのだろうか、
陽気な総帥様はそのままアラシヤマの隣に滑りこんだ


総帥室の応接スペースのソファーは小さいわけでも無いが長身の男二人を
容易に抱きとめられるほど大きくは無い。すでにスプリングが悲鳴をあげている



「…今日は解らへんことばっかやな…」
「何が」
「シンタローはんのセクハラは、まぁ置いといて」
「ふぅん、じゃあ日常的なわけね。明日から期待に応えてあげよう」
「それは堪忍して。ええとセクハラも含めて」
「つまんねー」
「で、どうかしたん?」
「いいや、別に」



そう言いながらシンタローはアラシヤマを両腕で抱きこみ無理やり一つのソファーに
収まると、目をつぶって寝る体勢に入ってしまった
取り残されたアラシヤマは繋げようとした言葉を飲み込み、さらさらとシンタローの
前髪を梳いた


「疲れてんのはあんさんの方やないの?」









雑務から通常業務までやらなくて良いことまで押し付けられて結局断れず
体力を限界まですり減らしているのはアラシヤマだが、
気にしなくていい事まで心に留めて余計な血を流さずにぎりぎりまで粘って、
これ以上は無いほどに精神を尖らせてすり減らしているのはシンタローだ


彼の周りの空気はいつでもピリピリと張り詰めていて、
何かの拍子に粉々に散ってしまいそうだった



ああ余計なことを考えるのはやめよう、そうでなくともここ数日分の
睡魔が一斉にやってきて自分を眠りへと引きずり込もうと躍起になっている
シンタローはもうすでに寝息を立て始めている








急ぎの仕事は無かったはずだから、とアラシヤマも目を閉じて
更に深くシンタローの胸にうずまった


































10時のおやつをグンマと食べたあとついでに、と雑用をすませて
昼ごろ戻ってきたキンタローはしばし息を止めた


応接用のソファーで、アラシヤマをこれでもかと言う位に抱き込んで
眠りこけるシンタローと、その胸の中で静かに寝息を立てるアラシヤマ



「お前のそんな安らいだ顔は久しぶりだな」



ぽつりと呟き、抱えていた書類を総帥用の執務机ではなく、自分の机に
どさりと置く
人の気配を感じたのか、シンタローがもぞもぞと動き、アラシヤマを抱え込んでる
腕の力を強めた





「別に取りはしないから、ゆっくり眠れ」










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最初はただ単にシンタローのお昼寝に付き合わされるアラシヤマだったのに…

アラシヤマが基本的にシリアス思考なんで引きずられました。
責任転嫁?それって喰えんの?


全てはガンガン八月号が悪い。エドのストラップなんてつけるのが悪い。
買っちまったじゃねぇか広辞苑みたいなガンガン!(暴言)




ぶっちゃけ「ひつじのあゆみ」様との
相互記念…

なのでひつじ様に限りお持ち帰りOKなのです。こっそりこっそり。
2004.7.30up
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