俺がシンタローの中から出てきた時、心を蝕んでいたのは醜い憎悪だった
あの島で自分のために泣いてくれる存在を知り、自分を慈しんでくれる存在を
殺した


そして新生ガンマ団で俺は居場所を見つけ、かつて憎悪し嫉妬していた
シンタローは自分の半身のように思えるようになった。
実際、その身を共有していたのだからそれも道理だ


ルーザーの子供として、シンタローの推薦もあって重役に付いたが当たり前にように
上層部の奴らからの風当たりは強かったが、何処までも俺を守ろうとする高松と
何処までも純粋なグンマが居ればそれも耐えられた





何もかもが変わった。
唯一変わらなかったのは、片目を隠した京都人だ
あれは、自分の親友を傷つけた俺をどうあっても許すつもりは無いらしい








鋭い殺気が、彼を察する基準になっていた




















混ぜるな



















今日もアラシヤマは書類をその手に抱え、総帥室へとやって来る


目いっぱい眉間に皺を寄せるシンタローに微笑みかけ、鼻血を噴出し
眼魔砲をくらい、体中から血をだらだらと流しながら立ち上がりへこたれず
再びシンタローに話しかけるのだ


終わりの合図は、シンタローがタバコを吸い始める時
アラシヤマが口を閉ざして指先に火を灯し、じりじりとタバコに火をつける
それを一吸いしてシンタローが煙を吐き出すと同時に、アラシヤマは
頭を下げて出て行く




俺を睨みつけるのは絶対に欠かさない





いつもと変わらない光景だった。
アラシヤマが去った後の書類の山を見て不機嫌になってるのか
それともアラシヤマの不在に拗ねているのか解らないシンタローも


いつもと変わらない、しかし今日は違った







「、おいキンタロー!?」







一つだけ変わっていた
いつも不満を垂らすシンタローを宥める俺が、彼を、
アラシヤマを追いかけるために走り出したことだ























ゆっくり歩いていたのか、アラシヤマは近くの廊下を背筋を伸ばして
音も無く歩いていた。あがる息を整え、歩いてその背中を追えば
肩に手をかける寸前でぴしゃりと手を払われ、くるりと彼が振り返る



「何や」



凄むようにこちらを睨みつける目は暗く淀んでいたが、
身を裂くような鋭い光を湛えている。
何だと聞かれても、俺自身何故追いかけたのかなど解らない。


言葉を探して黙っている見つめていると、はぁ、とため息が漏らされた



「シンタローはん放っといてええんか」
「あ」
「…えらい抜けとんなぁ、ワレ」



京都の言葉に詳しくない俺でも解る、それは決して親しいものに対しての
言葉使いなのでは無かった。それが何故か胸を痛めつける。
そもそも何故俺だけにそんなに冷たく当たるんだ、いやもう一人伊達衆の
一人とは仲が悪かったが、それも此処まで嫌悪感を露になどしていなかった


負の感情には生い立ち上耐性があるが、どうもこの京都人の視線は
俺には冷たすぎた。時々、心臓が潰れそうになる


グンマに相談しても、楽しそうに笑うばかりだ



「とっとと用件言いや。俺かて暇やあらへんのや」
「あ、ああ…」
「…」



再び黙り込んだ俺を、訝しげに見るアラシヤマの目は
もう冷たくは無かった。それに安堵して思わず笑みを浮かべると、
顔を覗き込んだアラシヤマがぴたりと止まった


浮かべた笑みはすぐに消えてしまったが、今度はアラシヤマが
笑みを浮かべた。男にしては妙に赤いその唇が、ゆっくりと弧を描いて
歪んでいく。うっすら細められた目の中に冷たい光など見えないのに、
何故か胸が痛み、動悸が激しくなる。


静かに間を詰めるアラシヤマからは視線を逸らさずに、
体は後ろに引いていく、心なしか顔も熱い。怒りは感じていないのに



壁際に追い詰められて、心臓の辺りにアラシヤマの右手が添えられる
今心臓はどくどくとうるさい程に脈打っている。それを知ってどうしようと
言うのだろう?


収まらない動悸を散々その掌で感じた後、アラシヤマはその笑みを崩さぬまま
俺の頭を両腕で抱き、鼻が触れ合う位置にまで近づいた。
お互いの息がぶつかる。頭がくらくらしてきた風邪だろうか?
目の前に強烈な光も無いのに、目を閉じたい衝動に駆られる





気づいた時には、更に近くにアラシヤマの顔があった
唇に感じる柔らかいものは多分、位置的にアラシヤマの唇だ
口付けは、愛し合う男女が行うものだと高松が言っていたが、
その時の俺はそれをすっかり忘れていた、覚えていても自分の行動を抑えられたか
解らない


頭に回されたアラシヤマの両腕の力が強くなり、恐る恐る開けた目には
アラシヤマの濡れた瞳が映った




閉じたままの俺の唇をアラシヤマの薄い舌がなぞる
驚いて薄く開いた矢先に舌を差し込まれ、目を見開いているうちに
入り込んだアラシヤマの舌は俺の口内を縦横無尽に荒らした


何度も角度を変えて吸われる合間に、アラシヤマのくすくすと笑う声と
水音が混ざり合って聞こえてきた





瞬間、俺の思考は途切れた







気が付くと体勢を反転させ、今度は俺がアラシヤマを壁際に押し付けて
その唇を貪っていた。唾液でぬらぬらと光るその唇は人間の器官では無いように
俺の何かを煽った。相変わらずアラシヤマは笑っている。いつもの嘲るような
貶めるような笑い方では無く、ただ楽しそうに


「っ、ん…」




漏れるその声に心臓を掻き毟られる
散々唇を舐め、舌を吸い、飽き足らなくなってきっちり閉められた制服を
力任せに左右に開いた。ばつん、とシャツのボタンが飛び、団のバッチが
乾いた音を立てて廊下に転がった


目の前に現れたおよそ現世の人間とは思えない、死人のような青白い肌に
唇を寄せ、舌を押し返すその弾力に服を掴む力が増す
上を見上げればアラシヤマは口の端から俺が注ぎ込んだ唾液を垂らし、
荒い息を吐いてにっこりと微笑んだ




か、と再び熱くなった顔を背け、首筋に噛み付いた
小さく声をあげたアラシヤマがすがり付いてくる。
俺は乳を吸う幼子のように白いばかりの首筋を吸った。



片腕でその細身を抱きしめ、空いた片腕でシャツのボタンをぶちぶちと
乱暴にはずしていく。露になった白い上半身にぽつんと赤い胸の突起を
指でつまみ、口に含んだ



「ぁっ…!」




余裕を保っていたアラシヤマの表情が崩れる。
夢中になってその色づいた先端を吸い、舐め上げるたびに鼻にかかった
声をあげアラシヤマはびくびくと震えた。密着して絡み合った足が、
アラシヤマが勃起していることを知らせる。


胸の突起を口に含んだまま、その猛りに手を伸ばす
布を押し上げているそれを形を確かめるように撫で上げると、
アラシヤマが一際高い声をあげた


そろそろとベルトをはずし、下着ごとズボンをずり下ろすと、外気に触れてそそり立った性器が
身震いするのを見つめ、膝をついて目線を合わせ、口に含んだ




「ぁあ、」





不思議なことにアラシヤマは少しも抵抗しない
こういった行為は、結婚した男女が子供を作る際にやる
ことだと教わった気がしたが。肉体を持ってからの生活が短い俺が
知っているのだから、アラシヤマが知らないはずがない


激しく脈打っていた心臓はいつの間にか収まり、その代わりに
心には初めてこの世に出てきたときのような熱い感情が渦巻いている



ただ咥えて先端を舐めていると、焦れたようにアラシヤマが腰を蠢かせ、
ゆるゆると前後に動かし始めた。そうする気持ちいいのか、口の中の
ものが硬さを増して膨らんだ。


別にアラシヤマが動かなくても俺が動けばいいことだ、
腰を掴んで頭を上下させて吸い上げると、髪にアラシヤマの両手が絡みついてきた



「ぁ、ぁ、ぁあ…キンタロ…」
「アラシヤマ…」
「んん、もっと吸うてぇ…ぃあ、っ…」
「アラシヤマ、アラシヤマ…」





アラシヤマの名を呼べばそのたび彼の性器は口の中で容積を増し、
俺の喉を突いた。今更だが嫌悪感を感じない自分が不思議だった
他人の性器を口に含む行為など初めてだから良くは解らないが


「はぁ、キンタロー…も、離しぃ…」



切羽詰った声でアラシヤマが言う。もう吐精するから離せという意味だろうが、
離す気にはならなかった。彼が放つものを飲み干したいと思った。
咥えたまま見上げると、上気した頬をしたアラシヤマが同じようにこちらを
見ていた。焦点がぼやけた目を見つめながら強く吸いあがれば、彼は簡単に精を放った



「ぁあああ・・・っあ、…」




ずるずると崩れ落ちるアラシヤマを見下ろしながら、口の中の粘液を飲み込む
やけに大きく鳴った喉に、緩慢な動作でアラシヤマがこちらを見上げ、
にぃ、と笑った。死人のようだと思っていた肌は上気して赤く染まり、
ふらふらと立ち上がると内股に俺の唾液が伝った



「……………」
「ふん、いくらシンタローはんの半身かて知識は此処までかいな」
「……何?」
「性教育はドクターの担当やからまぁ当然やわ」
「…何が言いたい」



濡れた下半身の始末もせずに下着を履き、ズボンをずり上げベルトを締めながら、
彼は笑っていた。あの熱気の最中のような笑顔ではなく、いつも通り嘲るような
歪んだ微笑だ





「面白かったわ、そんだけはお礼言っとか」
「…話が見えない」





確かに彼は笑っていたが、それは面白いからでは無かったはずだ
それとも俺は何か間違っていたのだろうか?衝動的な行動ゆえに
確信が持てない


「あんさんいつも俺んこと見てるやろ」
「…見ていない。お前の視線が冷たいから…」
「んで、心臓鷲づかみにされたんか?」
「ああ、良く解るな。グンマに話したら笑われた」
「俺でも笑うわ、そんなん」



そう言って本当に腹を抱えて笑い出した彼をどうすれば良いのだろうか
団内の廊下に笑い声が反響している。そういえば此処は団内の廊下だ
俺は先ほど此処で彼と何をしていた?


考えると顔が熱くなった。ああ、これが羞恥と言うものか



「今更何赤ぉなっとんのや」
「…団内の廊下で…」
「ああ、其処」




でなければ何処で俺が恥を感じる必要があるのだろうか?
答えを求めるように見つめると、笑っていたアラシヤマがすっと
その表情を消した


俺の胸倉を掴み、口付けが出来る距離まで顔を近づけ、
再び笑う




「ドクターやグンマはんに聞いてみぃ、『俺は、アラシヤマのことを考えると胸が熱くなります、どうしてですか?』」
「…………お前は解っているのか」




アラシヤマの手に自分の手を重ねて問えば、アラシヤマは俺の反応を
予想していなかったとばかりに目を見開き、くすくすと笑って唇を重ねてきた



また心臓が鷲づかみされる感覚に陥る。元凶の男はその理由を知っていながら
俺を煽り、嘲笑った。唇を合わせているとアラシヤマと一つの物体になるような
錯覚にも陥る


混ざり合ってしまえば、この感覚も無くなるのだろうか?
それは俺の未知の領域だ。知りたいと思うが同時に触れたくないとも思える








だがしばらくそうして混ざり合っているうちに、俺は
俺の気持ちが解らなくなってしまった。残ったのは、ただ彼と唇を合わせたいという
気持ちだけ。


























しかし、それでも良いと思った自分が居るのも事実だった







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キンアラにハマりそう。悲恋で。シンアラ前提で。
キンタローを弄ぶ悪い子アラシヤマ。何故発初書きがエロなんだ!
むしろこれじゃあ「混ぜたら危険」ですね

2004.08.15up
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