人によって愛の形は様々なのは解りきっているのだから、
第三者がとやかく言うのは無駄だという事も解っている。
本人が幸せで、周りに迷惑をかけない限りは。



だから、周りに重大な精神的被害を被らせているのなら少しくらい
注意しても良いだろう。
それってちょっとおかしくない?と。






「マーカーちゃん、隊長の服に頬ずりするのやめたら」
「何を言うかッ!私の楽しみを奪う気か!?」






だってそれ島から持ち帰って以来一度も洗濯してないでしょ、
と言う言葉をロッドはすんでの所で飲み込んだ









































狂気の純情







































第二のパプワ島から妙な形の飛空艦で脱出してからすでに数日。
政権に一時的に復帰したマジックを筆頭に上層部と何度目か解らない話し合いに行くと
言ったきりハーレムはまだ戻ってこない。



特戦部隊のための待機室は今も変わらず残されていた。
ともすれば高級マンションに匹敵する設備を撤去してしまうほど
ガンマ団の財政は良くなかったらしい。ハーレムが3億円横領したせいも
多分にあると思うが。



離脱していた間はどうやら客間として使われていたらしく、
通信設備やらは取り払われ、ホテルのようなどこか余所余所しい雰囲気が
部屋を覆っていた。




「マーカーちゃん、この模様替えはちょっと大胆すぎると思うな」




おおまかな構造はリビングとベットルーム、ハーレムが入ってきたとして
目に入るのはリビングだけで、ベットルームは見えない。
隊長であるハーレムが隊員たちの寝室をいちいち覗きにこない事を理由に、
マーカーはベットルームを大幅に変えてしまった。




昼食を取った後、惰眠を貪ろうと寝室に出向いてみたロッドは膝が
がくりと落ちる感覚に陥った。いや実際その場に崩れ落ちた。





床以外の全ての平面に拡大コピーをしたらしい写真が隙間も無いほど
貼られていた。勿論窓にも、果てには照明器具にまで貼られている。
電気つけたら焦げそうだな、と思ったがあの中国人が陶酔している隊長の
顔を、いくら写真とは言え焦がすような真似はしないだろうと思い直した。







ちゃんと隊長に了承を得て取ったものは全体の1割程度で、後は
ほぼ盗撮気味なものばかりだ。マーカーに言わせれば、隊長はカメラを
向けると高確率でふざけるので笑った顔や変な顔しか撮れないらしい。



そう言えば、現役時代に敵をなぎ払う隊長を見てマーカーが
艶かしいため息を吐いていた。







「本当に好きだね、隊長の事」
「50代とは思えぬハリのある筋肉を伝う水滴を舐め取りたいくらいにッお慕いしている!」
「あーうん、そうだね。うん全くその通りです」
「何!?貴様も隊長に劣情を抱いているというのかッ」
「や、言葉のあやで」
「蛇炎流ッッ!」







勢いで出した奥義の炎はロッドにのみ纏わりつき、ハーレムの写真には火の粉さえ
かからない。



炎がくすぶる音とロッドの悲鳴を聞きつけたGが台所からかけつけても、
きつね色に焼かれたロッドはぴくりとも動かなかった。




「マーカー…」
「ああ、隊長の体臭が染み込んだシャツ…なんて甘美な…」




咎めようと顔をあげたGだったが、理解の範疇を異次元レベルで越えて
しまった同僚になす術もなく視線を逸らした。
というか実は先日寝室に入った際に据えた匂いを放つ衣類があったのを
洗濯してしまったのだ。乾燥機に突っ込んだため干しているところを
見られたわけでもない。



つまりは隊長の服からは柔軟剤入り洗剤ボー○ドの匂いはしても隊長の
匂いは微塵も漂ってこないはずなのだ。
それでもマーカーが悦に浸っているのだから、もしかしたら隊長の体臭は
ボール○如きでは消せないほど強いものなのか。




それともマーカーの鼻から隊長の体臭が発生しているのだろうか、
とGが意味の解らない事を考え始めていると、ロッドがようやく意識を
取り戻した。




「あれ…G」
「大丈夫か」
「うんまぁ…どっちかっつーとマーカーちゃんの精神構造が大丈夫じゃないよ」
「重症なのか?」
「植物状態で語りかけても応じないの」





ロッドにしては的確な答えだが、これからの事を考えると気が滅入る。
とりあえず洗剤の類を隠しておいた方が良いだろうか?













ぱたぱたと体に付いた煤を払うロッドを手伝って、気付かれないように
そろそろと寝室を出るためドアノブに手をかけた。
が、そう都合良くいくはずもなく、鞭のように伸びてきた炎に手を弾かれた





「貴様ら、二人で出で行って何をしようと言うのだ!」
「…お前が燃やしたロッドの治療だ」
「ハッ!どうせ『俺の太い注射を打ってやるぜ!』『やぁんGの注射太くて熱ーいv』とかやるつもりだろうッ」
「………………ロッド、助けてくれ」





あくまでも真顔で叫んだマーカーにGが素になって助けを求めるが、ロッドは
微妙に口を歪ませて笑う事しか出来なかった。その手の言葉は酒の席でロッドが冗談
混じりに言うのがお決まりなのに。素面の状態のマーカーが言っている時点で
もう誰の手にも負えない。



このまま此処に居てはそのうち一緒にハーレムの衣類を嗅がされるかもしれない。
マーカーとは精神構造が違うから鼻を刺激するのはボ○ルドの匂いだろうが、
それでも好き好んで上司の服に顔をうずめたく無い。












写真で埋め尽くされた壁に囲まれた部屋の中央、隊員4人分のベットがあるはずなのに
そこにはキングサイズのベットしか無かった。高級感溢れる家具の割りにやっている事は
雑魚寝だ。



そのベットには今ハーレムの服が散乱している。



マーカーがひしと抱きしめている服以外にも、パプワ島で着ていた獣耳付きの服やら
ひな祭りの時につけていた鎧やら、とにかくハーレムが少しでも触れた服は全て
ベットの上に置かれている。



「マーカー、皺になるから他の服は片付けろ」
「ハァハァハァ」
「…駄目だよG、なんていうかマーカーちゃん獣になっちゃってるよ…」




もう意識を失ってでも良いからこの空間から抜け出したい。





切実にそう念じていると、背中にやんわりと暖かい風が当たった。
寝室の扉を閉めるのを忘れていたか、とGが振り向くとそこには何時の間に
入ったのかハーレムが壁に寄りかかってニヤニヤと笑っている。



息を呑んだGの様子を察したのか、ロッドも同じように振り返って同じように
息を呑んだ。




固まったままの二人の肩をばしん、とハーレムが叩く





「大変な事になってんなぁ、この部屋」





そう言う割りにハーレムの声は驚きの色など微塵も見せてはいないどころか、
まるで解りきった事のように部屋をぐるりと見回している。
マーカーはぶつぶつと呟いてシャツに顔をうずめている為この状況は
解っていない。





「お前らもう行っていいぞ。むしろ明日まで帰ってくんじゃねぇ」





ぎしり、とハーレムが片足をベットに乗り上げてもマーカーは顔を上げる気配は
無い。野良犬を追い払うように退室を促されたGとロッドは目を白黒させながら
ハーレムを見つめている。



冷静な頭で考えればこの後起こりそうな事など容易に想像はつきそうな
ものだが、つい先ほどまでマーカーの奇行の被害を一身に受けていた二人には
それは酷と言うもので。







「………お前らも混ざる気か?」








にんまり、そのまま裂けてしまうのではと疑うほど口の両端を引き上げた
ハーレムを見て、二人は我先にと寝室を飛び出した。




混乱した二人に体当たりされたドアがはずれてブラブラと揺れている。




「さぁて」




呟きが呪詛のようになってきたマーカーには少し悪いか、と思いつつも
ベットに散乱する服をバサバサと床に放り投げる。
据えたような酸っぱいようなとりあえず何かの兵器になりそうな悪臭を放っている
鎧は小さいゴミ箱に投げ捨てた。ゴミ箱が衝撃に耐え切れずに崩壊しているが
気にしないことにして、ハーレムはマーカーからシャツを奪い取った。




「何をする貴さ…!…隊長?」
「そー、隊長様」
「では会議は終わったのですね」
「ああ。まさかその間可愛い部下が股間膨らませて俺のシャツに顔埋めてるんなんてな」




さっ、と面白いほど一瞬で染まったマーカーの頬を見てハーレムが
喉奥で笑いをくつくつとこらえる。
ジャケットを伸ばして不自然に盛り上がった股間を隠そうとする手を一まとめに
くくってベットに縫いつけ、抗議の声を封じるために唇を塞ぐとマーカーの
肩からす、と力が抜けた。


















「そんなに俺の匂いが好きならたっぷりマーキングしてやるよ」








































































翌朝、言われたとおりに戻ってきた二人は部屋の奥から聞こえてくる
くぐもった声ときしむベットの音にげんなりとした表情で肩を落とした。


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17000HITありがとうございました!神無月様のみお持ち帰り可です。



結局ハーレムが絡むのは最後になってしまいました。しかも下品ですみません…;;
マーカーちゃん、楽しく書かせていただきました。
やりすぎだと言われない事を祈ります…!



2004.12.15up
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