目の前が霞む錯覚を覚えるほどの甘ったるい空気が部屋の中に
充満している。鼻のおくがツンとなるような感覚に涙を零しそうになり、
それを寸前で止めて匂いの元凶を睨んで声をかけたが、こちらを振り向きもしなかった


癪に障ったマーカーはその手に炎を繰り出し、自分に背を向け
ケーキを貪り続けるロッドに放った





























amore agrodolce






























ロッドを包み燃え上がると思っていた炎はその数cm前で掻き消えてしまった
その代わりにようやく背後の同僚に気づいたロッドが振り返り、にこりと
クリームまみれの顔で笑った





「何をしているんだ、お前は」
「ケーキ食べてる」





見たら解る、と言うマーカーの言葉は目の前のケーキを1ホールごと丸かじりし始めた
ロッドの奇行によって飲み込まれてしまった。脳を侵食するような甘い空気が
冷酷チャイニーの調子を狂わせてる。


それに気づいているのかいないのかロッドはけらけらと楽しそうに笑い、
テーブルの向こうに追いやっていたフォークで近くのカットフルーツを刺し、
マーカーの眼前に持っていった



「…」
「毒を食らわば皿までー」
「用法が微妙な次元で違っている」
「酒は飲んでも飲まれるな?」
「酔ってるのか?」




えへへ、と返された笑みはいつもの調子の良いそれで、泥酔してはいないものの
ほろ酔い気分で少々テンションが高ぶっているらしい。




何となく自室に戻る気も失せたマーカーはどかりとロッドの正面に座った




目の前には、いつだかロッドが好きだと言っていた欧州の有名な洋菓子店の
特製チョコケーキがところせましと並べられ、その合間にカットフルーツが無造作におかれている
両手をべたべたと汚しながら幸せそうにケーキを頬張るロッドはまさに天国と言った感じだ





「それで、何故いきなり大量の洋菓子なんぞ買い込んだ?」
「え、俺は買って無いよぅ」





床に無造作に捨てられているナプキンで口元を拭きながら、きょとんとした
表情でロッドが返す




「あのさ、さっきまで在った街って俺の第二の故郷なのー」
「第二?今日殲滅したD市か」
「そぅ。マンマは俺を愛してくれたけど、物足りなくなって12の時に家を出たの。
 特戦にスカウトされるまではそこでフラフラしてた」
「贅沢者め」



呆れたように息を吐きながら言うと、ロッドは何故か得意げに歯をむき出して笑い、
そうだけど少し違う、と大きな声で言った、というより叫んだ



「贅沢者じゃなくて貪欲だっただけだよ、今でもマンマとは仲良しだしね」
「それで今となっては消えた街で愛を貪っていたのか?」





そうだと肯定の言葉を吐くことも頷くこともせず、ロッドはにこにこと笑っていた
結局このケーキの山はなんだったのだと訪ねれば、忘れたとばかりにああ、と呟かれた



「殲滅の前に街の皆にお別れをしにいったんだよね、そしたらくれた」
「随分と気前の良い仲間だな」
「お祝い事にかこつけて馬鹿騒ぎするの好きだしね」
「何かあったか?」
「俺が生まれたよ」



にこにことした笑みは崩さぬままにロッドがマーカーを見る。
何かを期待するような目を向ければ、そのまま流そうかと思っていたマーカーが
心底嫌そうに目を細めた



「なんだよぅ、おめでとうの言葉も無いの?」
「おめでたい事があれば言う」
「俺が生まれたってば」



先ほどと同じセリフを甘ったるい口調で囁くように言ったロッドは
片眉を跳ね上げたマーカーをじっと見つめた。
熱視線を送られたマーカーは微笑む同僚の鼻をつまみ、馬鹿がと吐き捨てるように
言った



気道の一つを塞がれてしまったロッドはヒキガエルのような呻き声をあげ、
抗議のために大口を開けた。途端、舌先に感じるぬめついた熱い物体を感じたと
思ったら、体が床へと縫いつけられた








ぱちぱちと目を瞬かせて状況を確認すれば、数cm先には獲物を見つけた獣のように
目をギラつかせる中国人。普段の扱いから見れば熱烈な愛情表現に卒倒しそうな
ほど喜んでも良いはずだが、ロッドの本能が警鐘を鳴らしている。


完全に唇が重ねられ、ついに気道は相手に奪われてしまった。
ねとりと絡み付いてくる舌がロッドの喉奥へとどちらのものかも解らない唾液を
流し込む。どこからも空気が供給されなくなった体は徐々に酸欠に陥り、
あまりの息苦しさに眩暈がして涙が滲む



くらくらとする脳が白旗をあげようとしたその刹那、マーカーが
にやりと笑って唇を離し、滑るように顔を下げてロッドの胸に貪りついた







「ひぃあッ」






急激に流れ込んできた酸素を送り込むために大きく開けた口から
悲鳴のような嬌声が漏れ、舌で絡め取られた胸の突起からじわじわと
広がる鋭い快感にぎゅう、とロッドは目を閉じた


呼吸を止められていたせいで荒くなった息の合間に、マーカーが拷問かと
思うまでに唇を重ね、再び酸素の供給を絶とうとする










いつも生真面目で下品な事には容赦なく鉄槌を下すこの同僚が何故
こんな淫靡な行為に走っているのか解らないまま、ロッドの思考回路はぐらぐらと
揺れていた。脳全体が甘ったるい刺激で溶かされる錯覚を覚える



「、マーカーちゃんっ!」
「どうした」
「それはこっちのセリフだっての!」
「貴様の一番喜びそうなことと言ったらこれだろうが」
「へ?」



何が、と聞く前に中心でそそり立っているものを布越しにぞろりと舐めあげられ
声にならない嬌声をあげて仰け反った。必死に逃げようと暴れても、懐から
マーカーが取り出した一本の鍼によって無駄なことを悟る。
暴れて全身の神経を麻痺させられて好きなようにされるよりかは、割り切って
楽しんだ方が得。



そしてマーカーが奇行に及んだ理由も、おぼろげながらそれは確信として
心の中にあった。床に縫い付けられていた体を上半身だけ起こし、両肘で
支える




「マーカーちゃん」




ちろりと視線だけよこしたマーカーの瞳にはゆらゆらと獣じみた光が点っている
ようにも感じられる。自らの唾液でまみれた唇をゆっくりと動かし、なんだと
訝しげに問う

















「ありがとう」
















にこ、と微笑んで言えばマーカーは満足そうに目を細めたあと、
口に含んだものを一際強く吸った




































































「あー…腰がだるいよぅ…」
「動物みたいに盛るからだ、阿呆め」
「先に襲ってきたのはマーカーちゃんだろ!」
「四つんばいになって早く入れてくれと懇願したのは何処の誰だ、淫乱め」
「ぅう〜…」
「結局私が達する前に発情期の猫のような声をあげて気絶したのは?」
「…俺です…」
「全く、意識を手放した後もいやらしく内襞を私の性器に絡ませていたのはお前だぞ」
「…意識飛んだ割には、疲れが酷いんだよなぁ…」
「当然だ、その後5,6発注ぎ込んでやったからな」
「!!鬼ッ!お腹たぷんたぷんだよ腹下しちゃうよ!」
「最高の誕生日だな」
「そっちが目的かよ喜んだ俺が馬鹿だったぁああああ!
「今更気づいたか」


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タイトルの意味は「皮肉をこめた愛」です。
イタリア語は『形容詞+名詞』の形が普通なのか…よう解らん。英語のがまだ良い。


あれです、こんなことを考えるリースウェルが一番
えげつないです。さすがです自分。この馬鹿!


2004.10.10再up
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