闘技場で思いっきり暴れたい、と言うルークに引っ張られる形で連れてこられた
バチカルで一夜を過ごす事になった一行。
参加費がかさんでしまったのでせめてもの節約にとルークの屋敷に向かうこととなり、
城に戻ったナタリア以外に盛大な夕食が賄われた。
「こらルーク!またニンジン残して!」
和やかに進んでいた食事の最中、こそこそと皿の中の料理を弄くり回していたルークに
ガイの怒号が飛ぶ。
「や、だって…ニンジン不味い…」
「栄養あるんだからちゃんと食べろ、大きくなれないぞ」
ルークの向かいに座ったために無理矢理口に入れることは出来ない。
「俺もう17歳だってば!」
「俺にしてみればお前は7歳のガキだ!大人しく食えっ」
本来子供の好き嫌いを叱るのは親の役目じゃないのか、とシュザンヌを見るが
にこにことその様子を見ている。微笑ましい光景だとしか思っていないらしい。
宝刀ガルディオスを取り戻した際、何があったのかはティアには解らないがそれ以来
ガイは殊更ルークを気にかけるようになった。
ルークへの接し方が変わった、と言うよりは我慢をしなくなったようにも見える。
「ガイ、そんなに怒らなくても…」
「君もだよティア。さっきからニンジンが入った料理を避けているだろう」
「え、そ、そんな事…」
各自で取り分ける形式の料理が多かったため、これ幸いとニンジンが入っていない料理
をバレないように選んでいたつもりだったがガイには見られていたらしい。
「君まで残したらルークも真似するだろう」
どこまでもルーク本位の考え方に呆れを通り越してなんだか笑えて来た。
食べたくないだけでアレルギーがあるわけでも無い、ティアはこの場を収めるためと
自分に言い聞かせて大振りなニンジンを口に運んだ。
「ほらルーク、ティアだって食べたんだからお前も頑張れ」
「やだ!」
髪を切ってからのルークは傲慢な態度はなりを潜めたものの、代わりに子供っぽい
我侭が目立つようになった。
あくまでもガイに対してだけだったが。
見た目だけはしっかり17歳のルークが頬を膨らませてそっぽを向いている姿は
はっきり言って呆れる他無いがガイにはどうしようもなく可愛く映るらしい。
怒っていたはずなのにだらしない笑みを浮かべている。
「…ルーク、せめて一口は食べなさい」
おずおずと、ファブレ公爵が口を出す。
今更父親面をするのが気まずいのだろう、言われたルークは思いもしない言葉に
ぽかんと口を開けた。
「ルーク」
「へ?」
呼ばれて振り返った途端、口の中に独特の妙な甘み。
ニンジンだ、と認識した瞬間吐き出そうと舌を動かすが素早く口を塞がれてしまった。
「このまま飲み込めますよねぇ?」
目の前に、ネクロマンサーと呼ばれ敵国どころか自国からも恐れられているジェイドの
満面の笑み。甘ったるい口調。
「…ッ!」
ドッと嫌な汗が全身から噴出す。
めまいを起こしそうになるほど激しく首を縦に振り、ニンジンを必死に噛み砕いて
無理矢理飲み込む。
「いい子ですねぇ、ルーク」
差し出された水をびくびくしながら受け取り、横目でジェイドを身ながらちびちび飲む。
騒がしかったから怒ったのかな、と身を竦ませるルークの頭をジェイドが撫でた。
単に構いたかっただけらしい。
「た、大佐…その方法ではかえってニンジンが嫌いになるのでは…」
「いえいえ、陛下はこの方法でピーマンを食べれるようになりましたから」
「脅しじゃねぇか…」
「ルーク、何か?」
「ニンジン美味しいです」
「ていうかこのメンツでそんな事出来る大佐が凄いですよぉ〜」
「だぁって別に私にとって公爵は仇ってわけじゃ無いですからぁ〜」
ふざけるジェイドと目を合わさないように黙々と食事を勧めるファブレ公爵の姿は
どこか寂しかった。相変わらずシュザンヌはにこにこと笑っている。
ルークに身の危険が及ばなければ細かい事は気にしないらしい。
結局ルークは見るのも嫌なウォントの姿焼きまで食べさせられ、頭に浮かぶジェイドへの
罵詈雑言の嵐を何とか収めきり、ティアの慰めを受けて何とかその場を乗り切った。


「…あれ、皆は?」
ルークを見てニヤけて居たガイが現実に戻ってきたのは数時間も後だった。











2006/02/08 up






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送